テント

我が家のリビングの隅には白いキッズテントが置いてあります。

うちはリビングと和室、というように部屋が仕切られておらず、リビングではいつも家族の姿が丸見え。
娘もたまには一人になれる場所が欲しいかな、と思いつつ、けれどまだ小さいうちは、
離れたこども部屋に一人でいさせるのはちょっと心配。
そこで、リビングをゆるく区切れるようにキッズテントが良さそうかも、と考えて。
テントにはレースのカーテンを巻きつけ、クッションをいっぱい並べてみました。

 

私は小さい頃、たまにカーテンと窓の隙間にもぐりこんだり、押入れの中にこもったりして遊んでいました。
よく知っているいつもの自分の家が、自分しかいない、なんだか知らない遠い場所になったような。
傘をいくつも広げて組み合わせ、ドームのようにしたその中に友達と入ったり。
色とりどりの傘の天井から外の光が透けてとても綺麗で、自分が小さな生き物になったような不思議な感覚になったのを覚えています。

自分がこどもの頃はいつも家族の誰かしらがいて、家に一人きりになることはあまりありませんでした。
狭くて少し薄暗い自分だけの空間が、非日常の特別な場所に思えたのかもしれません。
そんな場所でただカーテンのレースの模様を指でたどったり、押入れの中に隙間から射し込む光をぼんやりと眺めたり。
ただゆっくりと流れる何もしない時間が無性に楽しかったのです。
こどもの時期は特に、ときには何もせず空想で遊ぶ時間も大切だなと思います。

 

娘は最近テントがお気に入りの場所になったらしく、テントの中でお人形遊びをしたり、
タブレットを持ち込んで動画を見たりすることも。
先日は色とりどりの小さなライトが点灯するおもちゃのステッキと花かんむりをテントの中に飾っていて、
とても素敵な空間になっていました。
危ないことをしていたりしないかも気になるので、たまにこっそり覗いています。

娘が成長するにつれ、もっと一人で籠もることも増えてくるかもしれません。
今は家にいるときは常に一緒の空間にいるけれど、だんだん自分の部屋にいる時間が多くなって、
リビングにいないことも普通になってくるのかな。
そんな日を想像すると少し寂しくて心がキューっとなりますが、それも大人になるということ。

 

私の居心地のいい空間は、小学校高学年になると実家の自室になり、そして一人暮らしのアパートの部屋になり、今は結婚後に暮らすこの家になりました。

これから娘も自分の心地いい場所を作って、それを大事にしてほしい。
そして私たち両親も、いつまでも娘にとって心地いい安心できる場所でありたいと思っています。