スタッフT

小さい頃は甘い物が苦手でした。

たっぷりの生クリームが乗ったケーキは23口でギブアップしていたくらい。そもそもお菓子にそこまで興味があった子供ではなかった気がします。
誕生日には母が作ってくれた、サッパリとしたヨーグルトケーキやレアチーズ
ケーキ。学校から帰ったらフルーツが入ったゼリーが冷蔵庫に入っていたり。記憶にあるのは忙しい中でも何かと手作りしてくれた母のおやつ。
大きくなってからは甘いものも辛いものもなんでもドンとこい!な柔軟な味覚になりましたが

大人になってからも、甘い物が大好き!と言う訳ではないので、今までお菓子作りは非日常的で、よし、作るぞ!と意気込んだ時しかチャレンジしないものでした。
けれど、母になり我が子がお菓子を食べる年齢になった頃。市販のものはどうしても気になる成分が入っていたりして、これ!と言うお菓子がなかなか見つからなかったのです。
それなら自分で作った方が早いし、きっと納得がいくだろう。と、不器用ながらお菓子作りを始めたのがきっかけでした。
最初に出会ったのは「なかしましほ」さんのお菓子本。使われている材料と写真やスタイリングが好みで、本屋さんで見つけた時に、衝撃でちょっぴり震えたのを覚えています。

なかしまさんのレシピ本は、基本、乳製品不使用で小麦粉や油は国産の農薬が抑えられたもの。オーガニックのナッツやチョコレートが使用されています。
素朴ながら温かさや素敵な雰囲気が写真から溢れていて、これなら家にある材料で作れるかもしれない!こんなお菓子を作ってみたい!とメラメラとやる気が出たのです。
実際に作り方は、簡単に出来るようにとても工夫されています。小麦粉のふるい器は使用せず、泡立て器でシャカシャカと混ぜ、その後は手で混ぜたりカードでサックリ混ぜたり。ほぼボール一つで混ぜたり形成したりできるものばかり。
少しの道具で洗い物も少なく短時間で仕上がるところも、子供が小さい頃はほんの隙間時間で作れるのでとっても合理的でした。

最初は生地がうまくまとまらず失敗する事もありましたが、コツを掴めば少しイレギュラーな事が起こっても、アレンジしたり軌道修正したり。何とか形になるようになりました。お菓子作りをほぼしてこなかった私にも、この本のように完成する事が出来た!と、とっても嬉しかったのを今でも覚えています。

最近は、あの頃の様に子供と密に過ごす時間も少なくなり、食べるおやつも子供同士で遊ぶ約束をして買いに行ったり、知らないうちに勝手に食べていたり。あれこれ気にしていた小さい頃とは随分と変わりました。
けれど、時々お菓子を焼いて子供の帰宅を待っていると、
いい匂い!今日のおやつはスコーン?マフィン?と嬉しそうな子供たち。
小さい頃の記憶がちゃんと残っている事も嬉しいですし、手作りのお菓子がある喜びを知ってくれている事に、何より私がじんわり温かくなります。

誕生日には家族が毎年、「タルト作って!」「今年はチョコケーキね!」と、市販のケーキの方が華やかなのに、私の拙い手作りをリクエストしてくれて実は結構嬉しいのです。
「えー!作るの〜?」と言いながらニヤける顔を我慢する私。。いつまで言ってくれるかな?子供たちが大きくなった時に、私のお菓子が少しでも記憶に残っていたら幸せだなぁ。と思いながら、またお菓子を焼くのでした。